青池はなぜ青い? [青森県環境保健センター 3月13日]



1.2016年度研究計画の立案
2016年度の研究計画を立てるに当たって
(1)   3色カラーセンサーでの昨年度までの研究結果の再現性を確認
(2)   発色に関与していると疑われた金属元素の濃度測定
(3)   酸素濃度が極端に高い(液体酸素はわずかに青色)という説は?
ということを調査しようと考えました。

実地調査に先立って
<光センサー部の再構築と防水耐水化>
をしました。
そのために、熱収縮チューブと自己融着テープ、エポキシ樹脂接着剤を利用して、センサー部とLANケーブルの接続部を防水しました。細めのLANケーブルが8芯、光センサーの入出力が6電線なので、LANケーブルを以てすればセンサー部の垂下を兼ねて、センサーとの通信もできると考えました。
深さ10 cmごとにビニルテープを付し、水深を数字で記入して、展望台から目視で深さを判断できるようにしました。下に試験室内で撮影した、センサー部の画像を示します。

2.第一回実地調査(2016年7月21日)
この調査時の青池の画像を示します。

<調査結果>
(1)   3色カラーセンサーでの昨年度までの研究結果の再現性を確認
→深さを付したビニルテープの数字が、湖面からの反射光で見ることが難しかったです。誤差が大きかったものの、赤色光が湖内で弱まっていることが確認でき、「水の赤色光吸収によって青色が見える」説を支持する結果が得られました。
(2)   発色に関与していると疑われた金属元素の濃度測定
→金属元素濃度の測定用に、酸で洗浄したプラスチック瓶を用意し試験室に持ち帰り測定しました。その結果、青色に見えさせるような金属元素は極めて希薄と分かりました。
(3)   酸素濃度が極端に高い(液体酸素はわずかに青色)のでは?
→酸素濃度測定用に、現地で溶存酸素を固定し、測定した結果、酸素濃度は飽和濃度の80%程度で、決して高い濃度ではなかったです。以上のことにより、青池の青色は水の性質という説が支持されました。

ただし、新たな課題も浮上し、
(1)   光測定の誤差を減らす方法は?
(2)   重金属イオンである陽イオンについては分かったが、陰イオン(マイナスのイオン)はどうか? 候補として、塩化物イオンなどのハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、硫酸イオンなどのオキソ陰イオンも測定してはどうか?

という意見が出ました。

これに加えて、2002年の当所の陸水学調査の結果で、十二湖湖沼群はアルカリ度が高い(酸性化しにくい)という記述がありましたのでこのアルカリ度というものも測定してみました。

上記により、第二回調査を行いました。

3.第二回実地調査(2016年8月29日)

この調査時の青池の画像を示します。

<調査結果>
(1)   カラーセンサーの沈めた深さを確かめるために、双眼鏡を使用
→ 再現性のよいデータが得られました。
ところが、この結果の解釈で課題が生じ、光強度の理論式に改良を加える必要性が示唆されました。(これがある一定の解決を見たのは第三回調査以降でした。)
(2)   陰イオンも測定し、その結果、青池湖水の陰イオンは、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオンの組成によると判断されました。

以上により、

(1)   測光結果については、理論値の計算過程の見直しをし、実験値をさらに蓄積する必要がある。
(2)   究極的には、化学分析により、青池と隣接する青くない池の水質を比較し、溶質(溶けているもの)、懸濁物(漂っている微粒子)が、青池において鶏頭場ノ池より低濃度であるならば、青池の青色は、これらのためではないと言えるのではないか。
(3)   今まで正午頃の測定であったが、光の問題ならば、太陽高度が低い朝夕にどういう色に見えるか、そして3色センサー測定値はどうなるのか調査すべきでは?
(4)   光測定は、帰庁してから結果を解析しており、またその帰庁時までは結果を検討できないので、表計算ソフトExcelのマクロプログラミングにより即解析可能なシステムを構築できないか?

という課題が出ました。これを受けて、第三回目調査を行いました。

4.第三回実地調査(2016年10月12日~13日)

この調査時の青池の画像も含めた、第一回、第二回調査時の画像も、比較のため示します。

<調査結果>
(1)   青池の色調は、朝から正午頃までは鮮やかで明るい青色、午後になると青さに深みが増し、群青色を経て、夕方には暗青色になりました。
(2)   3色カラーセンサーによる測光システムは力を発揮し、青池現地での調査と同時の解析が可能になりました。
(3)   (調査後ですが)今まで測光値の結果評価に使用していた理論式に太陽高度の影響を導入するとともに、指数関数のべき乗の扱いの誤りに気付きました。これらを修正し、沈めた深さに10 cmの誤差があると仮定した上で、実験値を評価すると、実測値と一致する結果が得られました。この理論値というのは、前にも何度か出てきていますが、水による赤色光吸収の強度計算を行った結果です。
(4)   ただし、(3) の成功は正午頃の測定についてであり朝夕は実験値を理論値が説明できませんでした。この原因は、太陽光を利用するという測光システムの限界かもしれないと考えています。
(5)   水質を青池と、それに隣接した鶏頭場ノ池について調査しました。青池のほうが濃度が2倍以上高かった金属は亜鉛だけで、これは着色しない金属です。陰イオンでは、青池の方が濃度が高い項目はありませんでした。青池は懸濁物(水中に漂っている微粒子。濁り)が極めて少ないことも分かりました。
(6)   溶存酸素も青池の方が濃度が低かったです。よって「青いのは酸素のため」という俗説は否定されました。金属元素陽イオンと陰イオンの濃度が(アルカリ度とpHの結果からの炭酸水素イオン濃度も)出揃ったので、イオンバランスを計算してみたところ、青池ではECという電気伝導度の実測値のイオンによる再現度が110%となり、測定した陽・陰イオンで青池のイオン組成が完全に説明されるという結果を得ました。



5.2016年度の実地調査以外に進展した研究結果
<色彩光学の計算手法による青色の再現>
対象物の色を光吸収スペクトルという物質特有の物理量から計算する方法も検討していました。第三回実地調査が終わった頃に従来の計算方法を改め、色彩光学の本格的な議論を行い、真上に太陽があって、白い湖底で反射されるという物理モデルを考えて、色を試算しました。

この内容と結果については、青森県環境保健センター年報(第27号)に掲載した論文を参照ください。

以上です。


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