訪日客の財布つかめるか 西日本商店街、来店者の18% – 日本経済新聞



 大阪や神戸、高知、長崎など西日本10市の商店街では来店者の18%をインバウンド(訪日外国人)が占める。日本経済新聞社が実施した初の西日本観光調査で明らかになった。クルーズ船の寄港や格安航空会社(LCC)の就航増で5年後には来客の2割を超すとの見通しも。訪日客の消費をいかに取り込むか、各地商店街の知恵が問われる。

■客増加に期待、高松70%

 商店街の店舗に対し来店者に占める訪日客のおおよそのシェアを尋ね、平均値を集計した。地区別では大阪が39%と最も高く、来店者の5割超と回答した店舗も大阪は3割と全体の1割を大きく上回った。神戸、高知でも訪日客のシェアが10%を超えた。無回答を除く全体の58%の店舗が「訪日客の増加に期待」と回答した。高松の70%が最も高く、神戸の68%、大阪55%、長崎53%と続いた。

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 高知でも43%の店舗が訪日客増加への期待を示した。高知市の中心商店街は大型クルーズ船の寄港時には訪日客であふれる。中心部で屋台村「ひろめ市場」を運営するひろめカンパニーの大西直人社長は「週末に比べ客足が減る平日に来てくれるのがありがたい」と歓迎する。

 もっとも、大阪・黒門市場の青果店の店主は「食べ歩きが多い訪日客向けの品ぞろえを増やす店が増え、商店街から国内客が遠のいてしまった」と不安をこぼす。訪日客が「増えてほしくない」「どちらともいえない」との回答は合わせて4割に上った。

 クルーズ寄港、LCC就航がもたらした「開国」に戸惑う姿が見て取れる。それでも5年後の訪日客のシェアの見通しは全体で22%となった。

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 舞鶴港(京都府舞鶴市)では今年、1500~1800人を乗せたクルーズ船の寄港が30回を超えた。JR西舞鶴駅の2015年の乗降客数は通勤、通学を含め約2800人。この半分超の人々が4~10月にほぼ毎週訪れたことになる。京都府は寄港に合わせ様々な催しを開いたが、人混みは港湾周辺に限られ、商店街は閑散としたままだった。

 京都府中丹広域振興局の真下恵子商工労働観光室長はクルーズ船の寄港を「京都北部活性化の契機」と捉えつつ、「いかに地域で消費してもらうか、という視点はこれからの課題」と語る。訪日客誘致に携わる関係者は「日本人が魅力を感じない商店街が訪日客を引きつけることはできない」と指摘する。訪日客を呼び込み消費を促す施策は、地元も含めた誘客とにぎわい創出にもつながっている。

 政府統計によると2017年7月までの1年間に日本から出国した外国人のうち、西日本の空港、港湾からは1145万人。この1年で18%増えた。このうち7割強が観光・レジャー目的。この比率と1人当たり支出額から算出した西日本の訪日観光客が飲食や菓子類、家電製品、民芸品などの買い物に費やした額は年間7000億円を超える。

 「兼六園とひがし茶屋街、近江市場に行く。おいしい魚を食べたい」。9月末、クルーズ船で金沢に降り立った謝綺梅さん(61)は香港からの友人8人と「予算は決めていないが、いろいろ見て回りたい」と買い物も楽しみにしていた。同じ船で韓国から家族5人で訪れたリ・サン・ヒュンさん(37)も「すしを食べて、何か特別なものを買いたい」と市街地へ向かった。

 家電製品や生活・日用品の「爆買いツアー」は減っており、「自由行動で地方に足を伸ばすリピーターの訪日客は確実に増えていく」(観光庁の笈田雅樹アジア市場推進室長)。こうした目の肥えた訪日客を引きつけ、再び訪れたいと思いを抱かせる地域ならではのモノやサービスを生み出すアイデアが求められる。

<現状変えるには…>「言葉の壁」対策が4割

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 商店街を訪れる訪日客を増やすための工夫や課題を各店舗に書き込んでもらったところ、256件の回答があった。この内容を分類すると、「多言語メニュー」「外国語のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」など言語関連が4割超を占めた。

 メニューや商品説明の表示だけでなく、「直接、コミュニケーションを取る」「英語で話しかける」との回答もあり、立ちはだかる「言葉の壁」に積極的に取り組もうとする姿勢が目立った。「中国語に対応できる人材確保」など雇用につながる回答もあった。

 福岡・天神の新天町商店街の婦人服・雑貨店「レイメイ 新天町新館」ではフェイスブックとインスタグラムで日本語と英語のページを用意。店頭でも試着時に写真撮影を勧めている。水木しげるロード(鳥取県境港市)の居酒屋店では地元海産物を提供するサービスなどが口コミで広がり訪日客が増えている。店主は「言葉の壁をあまり恐れずアピールすれば恩恵はある」と実感している。

 13%が回答した「品ぞろえの充実」関連で目立ったのが「国産、日本製を増やす」というもの。大阪・黒門市場の青果店プロデュースマーケットやすいの店主、安井英二さんは「日本産でもメロンなら北海道産など、産地を指定する訪日客が増えてきた」と語る。

 同じ黒門市場のカレー店ニューダルニーは「ムスリム フレンドリー」を掲げる。「食事に制約のある訪日客向けのメニュー開発などできることは多い」と考える店主の吉田清純さんがインドネシア総領事館から「エビカレーなら食べられるムスリムもいる」との助言をもらった。文化や宗教の違いへの戸惑いを乗り越えた先には大きなチャンスが待っている。

<交通手段は?>クルーズ船34%

 商店街を訪れた訪日客はどんな交通手段でやってきたのか。各店舗に複数回答してもらったところ、全体の34%の店舗が「クルーズ船」と回答した。高知が67%で最も多く、舞鶴、長崎で50%を超えた。「あまりポピュラーでないところにいけるのがクルーズ船のいいところ」(香港から金沢への訪日客)との声もあり、地方への誘客策として期待が持てそうだ。

 LCCとの回答は17%で、大阪が29%、高松23%で長崎、神戸も1割を超えた。LCC以外も含めた空路利用全体は38%だった。

 一方、JRなど鉄道は20%だった。大阪が30%、広島も26%と国内を新幹線で移動する訪日客が多いことが伺える。観光・貸し切りバスは16%だった。このほか、徒歩、自転車・バイクといった回答もあり、国内の観光地を自由に回遊している個人の訪日客も少なくないようだ。

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p class=”cmn-quote1″> 調査の概要 クルーズ船の寄港数などをベースに地域性を考慮して西日本の10市を選び、代表的な商店街でそれぞれ店舗100店(大阪は2カ所で200店)に支社支局を通じてアンケート調査票を配布した。8月10日から9月25日にかけ郵送などで回収した調査票の内容を日経リサーチの協力を得て分析した。全体の有効回答数は416、回収率は37.8%だった。

 グラフィックとレイアウトは田口寿一、田尻貴雄、河合圭が担当しました。




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