子育て家庭、お魚いかが 戸田漁協の移動販売 – @S[アットエス] by 静岡新聞



移動販売車に積んだ新鮮な魚介類を、調理法をアドバイスしながら勧める長畑しのぶさん(右)=2017年12月、長泉町内のフレスポ長泉

 静岡県内沿海地区17漁協で唯一、鮮魚の移動販売に取り組む戸田漁協(沼津市、荒川邦夫組合長)が本年度新たに販売場所に加えた長泉町内の複合商業施設「フレスポ長泉」で、子育て家庭に「お魚」を食べてもらおうと奮闘している。寒空の下、移動販売車に張り付いて販売役を務めるのは「漁協女子」の女性職員だ。
 「一番簡単なのは塩ゆでですよ」。同漁協職員、長畑しのぶさん(60)は1歳の女児を抱いて車をのぞく母親(34)に優しく声を掛け、前夜に戸田港で水揚げされたばかりの特産アカエビを勧めた。
 母子は施設内の子育て支援センターから帰宅するところ。入る前から車が気になっていたという。アカエビとアジの干物、サクラエビなどを購入。「幼い頃は魚屋さんがこうやって近所に来た記憶がある。意外な場所にいてくれて面白い。しかも女性がいて近寄りやすい」と楽しそうだ。
 県によると、2016年度時点で食品衛生法に基づき許可されている魚介類販売業の車は県内で186台(稼働状況は不明)と、20年前より85台減った。
 同漁協は公的補助を得て09~12年度に計4台を購入。もともと魚市場がないため沼津港や焼津港などに水揚げし、直売所は人気を集めていたが、周辺の民宿廃業などで客が減少傾向となり、外へ打って出た。女性職員4人も出張しているのは親しみやすさを出すことと「人手不足だから」と長畑さんは笑う。
 現在、長泉以外にもJA富士宮ファーマーズマーケット(富士宮市)、JA伊豆の国農の駅(伊豆の国市、伊豆市)の計3カ所をそれぞれ毎週訪れ、順調な売れ行きだが、長泉はなかなか上向かない。
 それでも続けるのは若い世代の魚離れを食い止めたいとの願いから。毎週寄ってくれる母親も現れた。その一人、静岡市清水区の主婦西尾千裕さん(36)は子どもを施設内の習い事に通わせる間に買い物。「目玉が必ずあるし、安くて、新鮮。調理法も教えてもらえる。お魚は対面販売が安心ですね」と喜ぶ。
 長畑さん自身、6歳と2歳の孫を持つ。30歳で夫と死別し、一度辞めた同漁協に再就職して子ども2人を育て上げた。「『お魚、食べてみようかな』と若い親子連れが言ってくれるのが、何よりもうれしい。もう少し頑張る」と話している。

 <メモ>2016年度水産白書によると、魚介類の1人当たり年間消費量は01年度の40・2キロをピークに減り続け、15年度は25・8キロ。年齢階層別の魚介類摂取量(1人1日当たり)は若い層ほど少なく、特に40代以下は、50代以上と比べて顕著に少ない。しかし近年、40~60代の減少幅が大きくなっている一方、15~19歳と、70歳以上はここ数年、横ばいから漸増傾向で推移し、年齢階層によって下げ止まりの兆しも見られる。




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